わたなべうに

わたなべうにさんは現在フリーランスのフォトグラファーとして、キッズフォトやニューボーンフォト撮影を中心に東京と近郊の千葉、埼玉、神奈川で活動しています。学生時代に幼児教育を専攻したのち一般企業に就職。いったん子どもの世界から遠ざかったものの、その会社がカメラを扱っていたことがきっかけでフォトグラファーに転身しました。「子どもや赤ちゃんを撮影するのがいちばん楽しい!」と言ううにさんは、ニューボーンフォト協会の技術講師も務めています。

回り道をしてたどり着いた

赤ちゃんの心とからだに寄り添う仕事

 

― うにさんがニューボーンフォトをはじめられた経緯について教えてください。

 

私は子どもや赤ちゃんの心とからだについて勉強がしたくて、短大の幼児教育科に進みました。そこで2年間学んだのですが、一般企業から内定をいただき、親の強い勧めもあってそこに就職しました。その会社には21年勤めました。仕事でカメラを扱っていたため「せっかくだから自分でもカメラに触ってみよう」と思って始めたところ、思いがけずカメラに夢中になってしまったのです。

でも、会社勤めをしていると仕事以外のことに時間を割く余裕がありません。「このまま人生を終わらせたくない」と一念発起して会社を辞め、写真学校に通い始めました。まもなくブライダル写真撮影の仕事を先生から薦められ、面接を受けたら合格しました。私のフォトグラファーとしての仕事はブライダルからスタートしたのです。

そこで関わりができた企業の営業の方から「子ども専用スタジオのカメラマンが足りないので、よかったら入ってもらえないでしょうか」とお話をいただきました。すごく嬉しくて「やります!」とお引き受けしました。やっと子どもに関わる仕事に就けて、「子どもを撮るのは、子どもと触れ合うのはなんて楽しいんだろう」と感じました。「私が撮りたかったのは子どもだったんだ!」と腑に落ちたのです。

スタジオの仕事をしていたときに、「最近日本でもニューボーンフォトが流行ってきたよね」と話題になりました。その当時も、ニューボーンフォトは生まれてすぐにご自宅で撮影するのが一般的でした。全国展開していたそのスタジオでも試験的に1ヶ月検診以降の赤ちゃんの撮影から始めてみようとしていたのです。その話を聞きながら「私もニューボーンフォトを撮りたい」と思いました。調べてみたら産院撮影を行っている企業があったので2017年にそこに入り、産院にお伺いして「ご希望があれば病室でママと一緒に生まれたばかりの赤ちゃんのお写真を撮ります」という仕事をすることになりました。

 

― ニューボーンフォト協会とはどのようにして出会われたのでしょうか。

 

産院撮影をするうちに「ご自宅に伺って赤ちゃんの写真を撮影していきたい」と思い始めました。産院では赤ちゃんについての知識、特に赤ちゃんに接する時にどのようなことに気をつけるべきか、厳しく指導されます。でも、その頃からSNS上で時々見るようになったニューボーンフォトの中には、「こんなスタイルで撮影しても赤ちゃんの身体に影響ないのかな。大丈夫なのだろうか」というような写真が目につきました。

「産院で教えたいただいたこと以外にも、もっと勉強したい」とニューボーンフォトの講座を探し、3人のかたの講座を受講しました。勉強になる一方で、それらの講座でも危険なポーズの撮影をされていて「もしかして医学的な知識が欠けているのでは? 大丈夫かな」と思うところがあったのです。

ある講座では実際に赤ちゃんを撮影しているところを脇で見せてもらったのですが、「赤ちゃん泣いてる。苦しそう」と思っても、「赤ちゃんは泣くものだから」と長時間おくるみをした状態のままにされていました。ショックでした。

もっとちゃんと教えてくれるところがないかと思って「ニューボーンフォト 講座」で検索し、ニューボーンフォト協会のWebページを見つけることができました。「無理な姿勢で撮影した写真は赤ちゃんにとって危険」ときちんと触れられていましたし、赤ちゃんの心とからだについても医療の専門家が2人いらして教えてくださるというので「ここならちゃんと勉強できる!」と思って加入しました。

 

 

コロナ禍でさらに問われている

赤ちゃんの安全とママの安心への配慮

 

― 現在どのくらいの頻度でニューボーンフォトの撮影をされていますか?

 

昨年は月に平均20件くらいの撮影をお客様のご自宅に伺ってしていたのですが、コロナが収束していない現在は自主的にその半分程度に減らしています。ご依頼は多いのですが、残念ながらお断りせざるを得ない状況です。

まず自分の体調管理を万全にしなければなりません。電車移動をしているため、感染リスクを考えると通勤時間帯などの人混みは極力避けたいです。また赤ちゃんが安全であるように、撮影の後は必ず機材や小物を消毒したり洗ったり天日に干しています。その時間を確保する必要もあり、現在は件数を一日1件、月10件程度にしています。一日に複数件承ってしまうと、そのへんが疎かになってしまうのではと考えているからです。

ご依頼をお受けした場合、撮影に関してママさんに事前のアドバイスをします。例えば「撮影の直前にミルクとおむつ替えをして、コロナの感染予防対策のために空気の入れ替えをしてください」「私は撮影の時にはマスクをつけ、マスクは取りません」「赤ちゃんが薄着になるので、大人はちょっと暑いけれど赤ちゃんの体のために部屋の温度は26〜27℃に設定してください」とか、詳しいご案内をしています。ご依頼されたママさんが「事前に教えていただいたので、すごく安心しました」とレビューに書いてくださったこともありました。

フォトグラファーの仕事は、ご依頼を受けたその時からスタートしています。初めてお会いするわけですから、ママの側に不安や緊張もあるでしょう。その緊張をある程度ほぐして当日をママさんが安心して迎えられるように、事前にお知らせできることは全部お知らせしておくことは大事だと思います。撮影以外にも、そのようなことに気をつけてやっています。

 

― ニューボーンフォト撮影に関してどういう形で発信されているのでしょう。その際に特に心がけていらっしゃることは?

 

自分のWebサイト(https://watanabeuni0510.wixsite.com/photo)を持っていて「安全・安心にニューボーンフォトを撮影します」とアピールしています。インスタグラムやFacebookでは過去に撮影したお写真でお客様にご了承いただいたものを紹介しながら、安全に関する私の思いも時々綴ってお伝えするようにしています。

ご依頼される方がSNSにある画像を送ってきて「このポーズできますか?」ということもよくあります。その場合は、はっきりとていねいにご説明します。お客様から、「予約前の問い合わせの時点からとても丁寧にご対応頂きました。最初に、うつ伏せなどポージングのリクエストをした際に、少しでも赤ちゃんの負担になる姿勢や不自然なポーズはお断りしていますというご回答を丁寧な文章で頂きました。私も勉強不足で、どんな姿勢が赤ちゃんに負担なのか分からずリクエストしましたが、断って頂いて本当に良かったです。そういった赤ちゃんの撮影に対する、真摯なお考えなどもすごく共感できました。」とレビューをいただいたこともあります。すごく嬉しかったです。

やはりママたちは、赤ちゃんの不自然なポーズの写真をたくさん目にしていらっしゃいます。そのようなポーズは赤ちゃんに負担がかかり好ましくないことを協会とともに発信して、赤ちゃんを守りたいと思っています。

 

生まれたばかりの赤ちゃんはとても繊細

やってはいけないことをきちんと知ろう

 

―  赤ちゃんにとって安全なポーズと、避けるべき危険なポーズについて詳しく伺えますか?

 

まず安全なポーズですが、赤ちゃんは基本、仰向けで寝ていますよね。ですから私も仰向けで撮影するようにしています。仰向けの場合も「小さい方が可愛く見えるから」とおくるみをぎゅうぎゅうに巻く方もいるのですが、私は赤ちゃんがかわいそうなのでやりません。赤ちゃんがおくるみの中でもぞもぞ手足を動かせるくらいにやさしく巻いてあげます。

おくるみを巻くのを心配されるママもいらっしゃるので、私が撮影するときには「赤ちゃんが裸の時間が長くなるのもよくないので、裸でちょっと撮影して、おくるみで軽く柔らかく包んであげて撮りましょうか」とご案内します。実際そのように包むと、からだがお母さんのお腹の中にいる時のような柔らかいC型のカーブになって、赤ちゃんがいちばん落ち着くスタイルになります。特に赤ちゃんがぐずってしまった場合は、おくるみで柔らかく巻いてゆらゆらと揺らすと、すやすや眠った可愛いお写真が撮れるので、ママに喜んでいただいています。

危険なポーズの一例としては、まず赤ちゃんをおくるみした状態で雪だるまのように立たせるポーズがあります。赤ちゃんは頭が重たいですから、頭や体がくにゃっと曲がらないように赤ちゃんをおくるみでとてもきつく巻いているんです。新生児にはとても危険なポーズです。

もう一つは「頬づえ」ポーズです。赤ちゃんが頭を自分の手で支えているように見えるもので、最近SNSによく出ています。あれは合成写真です。新生児のからだではあんなポーズは絶対できません。体にも心にも負担のかかるポーズです。赤ちゃんの重い頭を大人が持っている写真と、赤ちゃんの手首を大人が支え持っている写真を撮って、大人の手を消して合成して写真を作っています。それを「大人が支えているんだから大丈夫だろう」と思ってしまう人たちがいるのが問題です。たとえ一時的にでも、赤ちゃんにあのようなポーズをさせるのはとても怖いことです。脚はカエルのように前に投げ出しお腹のところから二つ折りにされていますが、赤ちゃんはお腹が苦しくなると思います。全てにおいて赤ちゃんのからだにとって心配なポーズです。

そのような写真をご覧になって「こんなことさせて大丈夫なの?」と危険に気づくママもいらっしゃいます。でも、残念ながら見た目の可愛さに引っ張られて「こういうポーズでも撮れるんだ」と思ってしまうかたの方が多いのではないかと思います。

 

― うにさんご自身がニューボーンフォトの撮影の際に心がけていること、さらに深めていきたいことなどありましたら教えてください。

 

私はご自宅に伺って撮影していますが、母子の退院当日とその翌日はなるだけ避けていただくようにしています。個人差はありますが、赤ちゃんの目はぼんやりとしか見えないにしても、周りの音や空気感に「なんか違うところに来た」と不安を感じます。

ママに「ご自宅に帰ってどういう感じですか?」とお聞きすると「病院ではあんなにすやすや寝ていたのに、家に来たら火がついちゃったように泣いちゃって」ということもあります。もちろん個人差があって、全然平気で病院と同じように過ごしている赤ちゃんもいるのですが、「環境が変わって1日2日は新しい環境に慣れてもらう時間をとって、それ以降に撮影した方がいいと思います」とあらかじめお伝えしています。

撮影については、今やっている方法をあまり変えずにいきたいと思っています。私の撮影した写真は、赤ちゃんがおくるみからちょっと手や足を出していたり、お顔に手が可愛く添えられていたりします。それは私がポージングしているわけではなくて、おくるみに柔らかく包んでいる時に赤ちゃんが自分でもぞもぞ動いて止まったところにおくるみを軽く巻いて撮影したものです。逆に赤ちゃんがおくるみの中に手を入れたがっているようだったら、ママに「ちょっと入れてみていいですか」と断って、気持ちよさそうに落ち着いたところを撮ったりします。

私からポージングをさせるのはあまり好きじゃなくて、なるだけ自然なスタイルで撮っていきたいのです。赤ちゃんのことをよく観察して、赤ちゃんの気持ちを汲み取ってあげたい。その時々で変化していく赤ちゃんの心とからだをちゃんと見てストレスがないよう撮影する現在のスタイルをさらにさらに進めて、ベストのタイミングを見極められるようにしていきたいです。

それから協会で講座を持っていますので、このような考え方に賛同してくれて、安心・安全に愛を持って撮影してくれるフォトグラファーがもっと増えるようにお手伝いしていきたいですね。

 

 

大切な命と向き合って撮った写真が

母子のこれからを支える一枚になる

 

― これからニューボーンフォトを手掛けたいと考えているフォトグラファーや、赤ちゃんを撮影してもらいたいと考えている妊娠中のママやその家族の皆さんへのメッセージをお願いします。

 

これから始めたいフォトグラファーの方にお伝えしたいことは、ニューボーンフォトは命と向き合う撮影だということです。生まれたばかりの赤ちゃんは想像以上に繊細です。数日前まではママのお腹の中で、ママから酸素と栄養をもらって温かい羊水の中で育てられていたわけです。それが生まれることによって、子宮の中から外の生活に移行します。この時期は「生理的適応時期」といって、細やかな部分に配慮してお世話をしていくべき時期です。ニューボーンフォトはその時期に撮影させていただいて大切な命と向き合うわけですから、赤ちゃんの知識をしっかりと学んで、その上で撮影してください。撮影の環境や、赤ちゃんの体勢とか気持ちを十分に考慮して撮影に臨んでいただけるといいですね。

次にニューボーンフォトをご検討されているママへ。ニューボーンフォトは生まれたばかりの可愛いふにゃふにゃな姿を記録として残すことができます。出産後の疲れや新しい生活リズムのなかでママが奮闘している間に、赤ちゃんはどんどん成長していきます。それにしたがって、小さな可愛い姿の記憶は薄れていくでしょう。日々の忙しさに押し流されそうになった時に、ぜひニューボーンフォトを見返してほしいです。「こんなに小さかったんだ、とっても成長しているなあ、愛おしいなあ」と思ってもらえたら嬉しいです。これまでママが頑張ってきた証拠にもなりますよね。ママの心が少しでも軽くなって前向きになれたらいいなと思います。

最後にすごく嬉しかったレビューを紹介します。「正直、新生児期は毎日が辛くて、赤ちゃんを可愛いと思う理由がありませんでした。撮影から3ヶ月が経ち、写真を見てはこんなに可愛かったんだなと目を細めています。もう二度と戻らない日々を写真に収めていただいて本当によかった。ありがとうございました」。このレビューをいただいた時「ああ、よかった! 写真を見てあの時の気持ちを思い出してくれて!」と思いました。

ニューボーンフォトが育児中のママの心に寄り添うものになることを心から願っています。

ニューボーンフォトグラファーわたなべうに